The die is cast もう始まってんだよ

"The die is cast" 「賽は投げられた」ってユリウス・カエサルの言葉らしい。

猪狩蒼弥さんのソロ曲『東京極楽』の歌詞の一つだ。

 

今回のBOOOOOST!!という3都市を回るアリーナツアーでも彼は自作の曲を披露した。ジャニーズ所属である彼が、ジャニーズJr.である彼が、コンサートの度に自作の曲を披露してくれることのありがたみと事の大きさが最近よく分かってきた。

 

『東京極楽』はその名の通り混沌とした東京を極楽浄土に見立て歌うという猪狩くんらしい世界観で着物、和傘、獅子舞の登場など和を基調とした今までよりもコンセプト色強めの曲だった。

ちなみに、東京のことをわざわざ歌うっていうのは関西ジャニーズが大阪のことを東京で歌う姿に痺れて書こうと思ったらしい。そのカッコ良さって東京の人にしか分からないような気がするけど、着眼点が面白い。

 

猪狩くんの書いてきた歌詞って、割と直接的で、明確な敵が居て、攻撃性を持っているような印象があった。

例えば『Fence』の

 

粗探しに必死こいた 劣等感の塊みたいな人(やつ)に限り指を差して笑う

「何を目指していますか?」

目指す?笑わせんな俺は俺だ。違いますか?

 

「俺は俺だから」って一時期よく発言していたのは、ジャニーズJr.という何にでもなれる反面常に新しいことを求められる存在として、そして不透明な未来を担う存在として重圧とか期待とか嘲笑とかいろんな反応を受けていたんじゃないかなと。

 

二つの曲の間には数字的な時間の経過と物理的な成長があって、『東京極楽』を聴くと『Fence』や『SparKing Gang』までに拡声器で叫び倒していたような勢いを抑えて、今の彼が人に示すことのできる丁寧さを全面に出したような、聖書みたいな綺麗さを感じた。

 

礼節を重んじる美の國 日本

丁寧な言葉で逃げていったPEOPLEが

置いていったものの中にあるよヒント

自分を愛せない人生なんて悲しいよ

 

ここめちゃくちゃ好きで。

丁寧な言葉で逃げていった人々__逃げていったという表現に攻撃性のようなものが垣間見えてなんか萌える。不意に牙が見えてしまったときみたいにドキッとした。

ずっと目の前にいたのに突然いなくなってしまった人たちが残したもの・築いてきたものをいかに拾えるか、武器に加えられるか、世代的なアレで、彼らのパフォーマンスって特にそういうものが土台になっているんだと思う。流動的な時代だからこそ、10年間も同じ場所でアイドルを続けている彼の言葉には重みがある。このことに気づけたきみは間違いなく輝きを増しているよ、と伝えたい。

そして彼が思う自分を愛せない人生って具体的にどんな人生だろう、とか考えたけど結局言いたいことって「僕は、自分の人生を愛している」なんじゃないかなと思って。誰かに向けたことを書くというより、「俺は俺だ」と何者にも取って変えられないんだと叫んでいた少年が、自分の人生を愛し生きていると、生まれ育った街・東京で今はこんなふうに生きているということを提示できる大人の側面を持った。

 

さらに"The die is cast もう始まってんだよ"という歌詞があって。「後戻りのできない戦いはもう始まってるんだよ」という意味で解釈した。つまり戦場から退くことはない、と。少し断定的すぎるかなと思いつつこれにはわたしの願望も含まれている。

有明の公演を経て、きみが、この先どれだけ大きな決断をしようとも、表舞台に立っていてくれればわたしは応援し続けるよと、そう思うことができたくらいには猪狩くん自身のことが好きになったよ。

というのも、"ジャニーズにいる猪狩くんが好き" "HiHi Jetsとして、アイドルをやっている猪狩くんが好き"という気持ちがあって。今でもそれは変わらないけど、正直、最近の不安定なジャニーズ情勢を気にしている身としては彼らのことば一つ一つに揺さぶられてしまう。そんな中で「この先、小さかったり大きかったり決断をする時が来ると思います。だけど、それは皆さんのためです。だから最後まで俺についてきてください」と言い切ったから驚いた。ネガティブな意に捉われかねない。しかし、それを言ったきみがそんなにバカじゃないことも分かっている。強い言葉を使ったけど、ほんとうにそんなことする人じゃないと分かっているから、だから信じられる。これはわたしたちが人生を彩るために、自分たちのことを都合よく使ってくださいと伝えてくれた優しい覚悟と似ている。

そしてもし、既に決断をしてあったとしても、わたしはこのことを思い出してきっと許してしまうんだろう。

とにかく、まだ大海に踏み出すことはできていない彼らがずっと5人で居られるように、追い風になっていたい。どんなステージに立っても誰よりも速く駆け抜ける彼らから、片時も目を離さずに追い続けたい。

追記

10/4発売の日経エンタテインメントで、「井の中の蛙って言うけどそれでいいんじゃないかなと。自分が知るべき"大海"なんてないのかもしれなくて、今いる"井"を広げていって、その頂点に立てたらいい」と言っていた。大海に踏み出さずとも世界を知ることはできるんだ。新しい価値観で彼らしい。

 

遅れたけどHiHiの日おめでとう。

わっしょいCAMP!までに書き終えられてよかった。ここまで読んでくれてありがとうございました。配信見てきます。